流行2

「流行」のものは、いたるところから現れると昨日書いた。私の知るのは本の話だが、私は『気くばりのすすめ』を見るたびにツブス(古本屋は本を捨てることを「ツブス」と言う)。『バカの壁』もツブス。漱石全集も大体ツブス。ばんばんツブス。

漱石を「流行」と呼ぶのはさすがに気が引けるが、ようするにあふれ返っているものはツブス。世の中から減らす。減らさなければ価値は減じる一方だから、神に代わって成敗する。神に成り代ったつもりにならなければ、本はツブセない。その時は、使い終わったメモ紙だと思うことにしている。

本はその内容の価値だけでは計れないのが変なところだ。なぜ『気くばりのすすめ』が売れたのか。『バカの壁は何万枚の壁を取り払ったのか。それとも、あの本は世の中に何万枚もの壁を発見させ、作り出したのか。良い悪いは別として、そういう何かが起こっているという面が必ずある。

百年かけて百万人の読者を得ることと、一年で百万人の読者を得ること。前者の方が良いと人は思いがちだが、私には同じことのように思える。

永遠のように長く感じられるような時間続くものと、その時一瞬輝くものと、どちらが良いのか考えあぐねている。