朝と夜

朝、7時くらいの電車に乗っていると、意外にスマートフォンを覗き込んでいる人の姿が少ない。
電車に乗らない人はご存知ないだろうが、現在車内は携帯電話とその電波でぎゅうぎゅうになっている。電波に色がついていたら、めまいがするような状況だろう。

 

それが、朝早い時間になるとかなり控えめになる。なぜなら、早めの時間だと車内で新聞を読む人がいる。そして、当然朝早いので口を開けて寝ている人が多い(閉じている人もいる)。車内に人が少ないこともあるだろうが、明らかに携帯電話やタブレットの使用率が低いのが見て分かる。

 

これが、夜終電近い電車になるとすごいことになる。車内のほとんどの人が、携帯電話の画面を覗き込んでいる。LINEで一日の名残を誰かと惜しんでいるのか、facebookで大好きなあの子を監視しているのか、メールで秘め事の約束をしているのか、掲示板でなにかの悪巧みをしているのか。

 

その機械の向こう側に、誰かの息づかいが聞こえるとすれば、もうそれは抗えない魔法なのだろう。その気配をもとめて、人は薄くて平らな板を撫でさっている。そして、私はそれをじっと見ている。