いまだに知らないことばかり

慌ただしく片付けをして、ついで家賃を支払い忘れていることに気がついて、慌てて再び外へ出かけた。
みずほ銀行の場所は一度行ったことがあったので、まぁそれで問題あるまいと思っていた。

私の使っているスマートフォンは、バッテリー周りに難があって、しばらく使っているとうまく充電出来なくなる。電源を入れなおせば回復するので大した問題でないとも言えるのだが、まぁ問題だ。今日もその弊が出て、出かける前に電源を切って充電し直す必要が出来た。

そのため、携帯電話は家に置きっぱなしで出かけた。知った場所なので、問題あるまい。渋谷公会堂みずほ銀行があって、目的地はそこである。徒歩15分というところか。無事到着したのが5時過ぎだったのだが、営業時間4時までだった。

さて、ちょっとお腹が痛くなってきてしまったぞ。渋谷公会堂の前に並んでいる人達を、コンサートにしてはちょっと変わった客層だなー、などと現実逃避していたが、そんなことをしたところで、みずほ銀行は目の前に現れないし、家賃の振り込みは出来ない。

いかに「バカ製造機だ」と罵ったとて、スマートフォン一つあれば、銀行のATMはものの数秒で見つけることができる。場所が分からなければナビまである。ただし電話はただいま家でゆうゆうと充電中。困っているのは、製造されたバカ、私一人である。

渋谷には間違いなく、みずほ銀行はある。そこは確信できるのだが、さていざどこにあるのか、となった時に全く思い出せないのが頭の仕様だ。控えめに言って、渋谷駅周辺とは30年の付き合いがある。ただし、みずほ銀行とは2か月ほどだ。使わないところは記憶に残らない。人は関係ないものを憶えない。

仕方なく、坂を下りて駅の方へと歩いていく。一か八か、突き当たることに賭けたわけだ。天下のメガバンクだ、でかい看板がかかっていて「バカでも見つかる青いみずほです」と書いてあるに違いない。
渋谷は人通りがとても多く、キョロキョロ上を見て歩くとすぐに人に引っかかってしまう。

道行く人は全然よけてくれないし、二人以上で並んでいる人は多いし、こっちはこっちでキョロキョロしているしで泣きそうだった。「自分は、田舎に行ったら行ったで、人が全然いなくて寂しくて泣きそうだ、とか思っているのだろうか」と思って、もっと悲しくなった。

センター街の入り口のところまで出ると、でっかい青い看板が出ていた。18時すぎると手数料がかかるので、間に合ってホッとした。まぁ、見つかれば手数料くらい払っても構わないという気持ちだったのだが、その辺はともかく。すごい沢山のATMが並んでいて、並ばずに済んだ。

こんな悲しい思いまでして、お金まで払うのかと思うと、帰り道また少し暗くなったのだが、それが人生というものなのか。
洗濯用の洗剤が切れそうだったので、ニュービーズを買って帰った。一箱198円。洗濯洗剤は生まれて初めて買った。すごい安いなと思う。