出されたものは

こどもの話を書いていて、思い出したことがあって。
私は小さい頃は、出されたものは全部食べるこどもだった。
おそらく、親からそうしろと言われたのだと思うのだが、実際のところは思い出せない。まぁ、良くある教育だし、それがどうとも思わない。

記憶によると、私は出されたものを全部食べることを、「こどもの矜持だ」とすら思っていたような気がする。他ならぬ自分のために、わざわざ作ってもらった料理である。全部食べなければ名が廃る(すたる)、わけだ。
それがいつしか、食べ物を残すようになった。

おそらく、食事をした後に(場合によっては前に)、自分の財布からお金を出すようになってからだと思う。わざわざお金を払って、嫌なものを口に入れる必要はないという理屈が、こどものころからの習慣に勝ったのだろう。

それに付随して、食べ物に対して「まずい」とか「おいしい」とかそういう感想を口に出すようになった。「おいしいからもっと」とか「まずいからいらない」とか。育ちの悪さがにじみ出ているが、これは最近の習慣なのだと、なぜか自分に対して言い訳をした気持ちになる。