王様の耳はロバの耳

私は古本の組合に所属しているのだが、その中の南側の支部に所属している。その一年間の掉尾を飾る総会が先日あった。まぁ総会と言ってもそんなに大仰なものではなく、「予算がある以上はいろいろな義務が付随する」といったようなことを、消化するためにあるようなものである。

総会自体は、例年通りなにごともなく終わったのだが、その際アンケートが配られた。総会の議事録を掲載するために、「支部報」というのが年に一度発行されるのだが、アンケートの結果はそれに載せるらしい。設問は「あなたのベスト3(映画・本等なんでも)」と、「あなたは10年後何をしていますか?」。

この後のヤツが難物である。設問自体は簡単な体をしているが、実際には「10年後に起こっている変化を予測し、さらにその中に自分をあてはめろ」というわけである。小学生の「ぼくの将来の夢」ではあるまいし、手にあまること片手で西瓜をつかむがごとしだ。

来週のスケジュールも覚えていないのに、10年後のことなど分かろうはずもない。予定だけ言えば、私は古本屋は「クビ」になっているはずなのだが、それでも「アドリア海のほとりで避暑をしています」と書く自信はない。
「知るか、ボケ」以外のなんと書けば良いものか。

アンケートは悩み抜いて適当に書いた(大人なので)。総会の会場を見渡すと、50人くらいの人がいる。この人たちみんなアンケートを書いているのだろうかと思ったら、大きな声どころか小声でも言いづらいが、「大体、この人たちに10歳も足せるのかよ」と思った。墓場まで持っていくような話だ。