鼻白む

イチローの名言集、みたいなものをインターネットで見る機会がある。内容といえば、
『他人の記録を塗り替えるのは7割、8割の力でも可能だが、自分の記録を塗り替えるには10以上の力が必要だ』
というようなもので、確かに良いことを言っている気がする。

もちろんイチローは超一流のプロ野球選手なので、こちらには想像もつかない領域というものを知っているはず。その人の考えていることをうかがい知れる、ということもなかなかエキサイティングだ。
ただ、こういう言葉を喜んでいいものなのかな、とも必ず思う。

プロのスポーツ選手としてのイチローから、その身体性みたいなものを差し引いて言葉だけ抜き出しても、それは実際のイチローからはかけ離れたものになるはずだ。150キロの速球を前に、バットを持って立たない人間に「実際のところ」は分かるまい。

「一流の言葉は、他の一流に通じる」と言われれば、確かにそうかもしれないとも思う。スティーヴ・ジョブズに「Think different.」と言われると、なんとなくその気になるが、そういえば自分はジョブズでも宮本茂でもないことを思い出して、鼻白む。