月に向って

もう少し仕事するか、と思ったのでとりあえず夕飯を食べに吉野家に出かけた。ひと月に一度くらい利用するのだが、好き嫌いを言えば一ヶ月に一度利用するくらいは好きだ。少なくとも、牛丼チェーンの中では「牛丼」に関して言えば一番良く出来ているのではないかと思う。

久しぶりに行ったら、豚汁と生野菜のセットというのが目に入ってきて、ついそれを頼んだ。週末に健康診断をする予定があるので、つい野菜に目が行く。生野菜を数十グラムとったところで、何かが改善するわけではないような気がするので、これもまた泥縄の一種ということだろう。

普段は並・卵・味噌汁でちょうど500円という記憶だったので、今日の670円はかなり奮発している感じだ。そして、奮発して食べていると、ふと財布の中身が全然ないのではないかということを思い出した。
財布を開けると570円しかない。さて、困った。

あわてて、店員さんにメールを出して「頼むから金を貸してくれないか」と伝えた。すぐに「わかった」と返事が来たのだが、食べていても気が気ではない。牛丼や豚汁が減っていくのが恐怖となって襲ってきて、味も良く分からない。思わずお茶を頼んだ。

しばらくしたら彼がやってきて、1万円貸してくれた。おかげで、ホッと胸をなでおろして食事を終えた。ありがたい。しかし、彼にとってはようやく仕事が終わったというのに、なんという災難だろうか。申し訳なく思う。
「もう、大人なのにな」って、満ちたお腹を抑えながら月の方角に謝る。