令和の古本屋1

シャッターを上げて、店の中に入って、自分の荷物を帳場奥に放り込んで、店を開ける。
古本屋の一日はどんな日であろうと、均一の台と箱と本を外に出すところから始まる。そうしないと身動きが取れないからだ。
ワゴンを出して、箱を出して、そこに本を詰める。既に詰まっているものもある。
その途中で、日除けをくるくると伸ばすのだけれど、そこで当然空を見上げることになる。

古本屋は雨が降ったら即死なので、曇りの日などは文字通り心も曇る。
朝から既に雨が降っている場合は、既に死んでいるので案外あきらめもつく。死人の心は穏やかだから。
ただ、「降りそうかな、降らなそうかな」という場合は悩ましい。心は千々に乱れる。
均一の台と棚の配置には、晴れの日用と雨の日用の形があり、一体どちらにしようかしらん。

一種の賭けである。天気をもって、一日の死生を問うとして一体どちらに賭ければよいか。
答えはもちろん決まっていて、そういった時は、私は常に「雨は降らない」に賭けて、
結果として勝ったり、負けたり、負けたりして日々を過ごしている。