絶対優しくするリスト

私の「絶対優しくするリスト」は今三行書き込みがあって、
・駅員さん
・配達業者さん
・コンビニの店員さん
となっている。
この仕事に従事してくださっている人を、自分より下に見ているということではなく、
「それはもうあまりにも」と思うところを見かけて、その際、せめて私だけはこの人たちに優しくしよう、と決めたのだった。

朝夕の通りすがりの道にあるファミリーマートがあるのだが、その店を切り盛りしているとおぼしき夫婦の店員さんがいる。
いや、名札の苗字が一緒だから、勝手に夫婦だと決めているだけなのだが。
二人とも必要以上に痩せている印象で、彼らを発見して以来、基本的にコンビニに用事がある時は、そこを利用することに決めていた。
ポイントカードを作れと言われれば作り、もちろんファミペイもじゃかじゃかとチャージだ。
コーヒーとパンばかり買うので、このレシートはコーヒーの20円引き券だから明日使ってくれと指示も受ける。
道ですれ違えば、別に言葉を交わすわけでもないのだが、会釈をするくらいの仲だ。

ところで、「決めていた」となぜ過去形になっているのかというと、先月末に店がリニュアルとなって、店員さんが入れ替わった。
おそらくオーナーが変わったのだと思われる。いつもの枯木のような店員夫妻の代わりに、外国の方が店番をつとめるようになった。
やはり、あの夫婦がコンビニのオーナーだったのだろうか。
私はその夫妻を見ると、「あの人たちは、いつまで働いたらコンビニ勤めをやめて楽になれるのかなー」などと思っていた。
特に旦那さん(いや、本当は夫婦かどうかはわからないのだが)は、夜勤開けの朝にぶつかると文字通りへろへろで、レジを変わってあげたい気持ちになったものだ。
そんな彼らがいなくなって数日後、「あれ、俺はあの人たちのためにこのコンビニ使ってたんだ」ということが、突然思い出された。
枯木夫婦(ひどい)が仕事をやめられたのだとすると、それはとても良いことなのだけれど、このなんとも言えない悲しみは一体なんだ。
どうやら、彼らを支えることが私の一部分となっていたようだ。

鳥ガラ夫婦(ひどい)からの解放は、私にとってはファミリーマートからの解放でもあるはずだ。
これからは、セブンイレブンに行っても気は引けないし、意表を突いてローソンに入れあげてもよい。
ただ、そうすることで私のこの喪失感は埋められるものなのだろうか。
あれ、俺の心の親切は一体どこ行けばいいの? 次の痩せ過ぎた店員探す? そんなバカな。
レジにいるソンさん(明らかに新人)にはとても伝えることのできない感情を抱えながら、私は今日もそのファミリーマートでパンとコーヒーを買った。。
その際、「T-POINTは店もちで、Dポイントは向こうもちなんだよね。もちろん、お客さんにはどっち使ってもらっても構わないんだけど」
と骨と皮だけみたいなおじさんとなぜか交わしたそんな会話を思い出しながら、レジの清算をする。
これから、T-POINTカードを出すたびに、チクリと胸が痛むのだろう。