中を見る

続報を待つ人もいないのだが、健康診断へ行った。おそらく二十年ぶりくらいで、それは初めて就職した際に書類の提出が必要で、なんだか3000円くらかかった気がする。金額から言って大したことはやっていないことは明確で、「明日死ぬことはない」というような診断書が大事だったんだと思う。

というわけで、こんなに色々調べてもらったのは初めての体験だ。
まず、生まれて初めて血を抜かれた。ビックリしたのは今の注射器はとても優秀で、その際全く痛くなかったことだ。医療の進歩、すごい。
次に、レントゲンを取って、おしっこを提出して、心電図を取った。

今日のクライマックスはその後行った内視鏡検査で、いわゆる「胃カメラ」を飲み込むやつだ。まずは喉やらなにやらに麻酔(液体)をぶつける作業をして、ある程度時間がたったらカメラの出番。どう見てもエイリアン系の、先端が光った細長いものが登場。

横向きになった後咥えさせられた、真ん中の開いたプラスチックを通して口・喉・胃にゆっくりと差し込まれていく。わずかにえづく感じがするくらいで、痛みは無いのだけれど、「体内をまっすぐ蛇が進んでいく」という感じはあって、それに対する自分の「無力感」が半端ではない。

目を開いていた方が筋肉の緊張が無いそうで、目を開けてじっと棚の隅っこの部分を見ていたのだが、お医者さんの方から見ると、ほとんど死体のような無感情で虚無的な顔をしていたと想像する。毎日そういう顔ばっかり見ていたら、病まないのかしらんと、虚無顔をしながら思っていた。

「はい今、胃ですよー、次十二指腸行きまーす、戻りまーす」というお医者さんの声を聞きながら、ただただじっと終わるのを待つ。なにせ、体の中を一本の太い管が通っているのだ。当然、動くのもはばかられる状況。「早く終わらないかな」とも思わず、ただ無になって待つ。

「はい、終わりです」と言われたとは、起き上がって口の中にたまった唾液と麻酔を吐き出す。なんだかグッタリして、着衣を直しながら、「エイリアンはこれで麻酔なしか……」と、宇宙船のクルー達にかなり同情的な気分になれた。
そして、麻酔の進歩による医学への貢献はとてつもないよなと思ったよ。