中央市会だより(11月16日版)

中央市会だより(11月16日版)
よその会の宣伝などしないのですが、来週は東京古典かいの大市。再来週は東京資料会の大市準備のために、中央市会はお休みになります。万を越える高価な品物を、見たり買ったり売ったりできる魅力的な二週間なのですが、その分普段お客さんに届ける一般的な本が市場で調達できません。必要がある本屋さんは、足早に会館にいらっしゃっていただきたく。均一の棚がすっかすかになっていると、金額以上に「損をした気」になりますぜ。
安い本以外にも、本日は三口の仕分けがありました。埃の中から掘り出したような本の縛りを仕分けるのは、楽しい作業ではありますが、手が真っ黒になってしまうのが悩みのタネです。さてその甲斐はあったか、実際にご覧になっていただければと思います。本日も中央市会をよろしくお願いいたします。
あと、早稲田の丸三文庫さん。先週の脚本の続きが出ております。来てください。

中央市会だより(11月2日版)

中央市会だより(11月2日版)
「日頃の行い」、という話があって、参加業者全体の差し引きがプラスだっ
たのでしょうか、「神保町古本まつり」は雨がほとんどなく無事完走したみ
たいです。なんか、五日も六日も降っていた時もあったような記憶がありま
すので、実におめでたいですね。
それが終わったからか、神保町から天使が去って、今日は久しぶりに雨が。
朝、窓から見える空が真っ暗だったので、早く起きすぎたのかと思いました
が、そういうことでは無かったようです。まぁ我々中央市会には天使はいな
かったということですが、僻んでも仕方がないので、天井のある幸福を噛み
しめながら仕事をしたいと思います。
本日は、神社の建て替えにともなう出品がありまして、目玉です。天使はい
なくとも、神さまはそばにいる月曜日。八百万人のうち、三人くらいは来て
いるのでは。

中央市会だより(10月26日版)

中央市会だより(10月26日版)
土曜日、荷受けに出かけてみると、仲良しの業者が最終台の前をうろうろしていました。「不審者ですか?」と声をかけると、もごもごと言っています。どうやら、司馬遼太郎の署名本を出品するのだ、ということ。それはすごい。
「日本酒ならば辛口、というように、司馬遼太郎村上春樹の署名本と言えば偽物らしいですよ」と私が言えば、これは大丈夫だというようなことを言っていました。何を言っているかは聞いていませんでしたが、目が嘘をついていなかったので良いものなんではないでしょうか、と思った次第です。少なくとも、「昨日目の前で書いてもらった」、というようなものでは無いみたいですよ。
只今、神保町界隈では「神田古本まつり」が開催中。売る店が増えると、出品物が減るというのが簡明な理屈ですが、心配したよりも荷物はまぁまぁ集まっております。本日はネット入札も開催中で、こちらはお店番をしながらでも入札できます。エクストラネットより、ご参加いただければと思います。朝起きると思わず、「寒!」と声が出ましたが、良いお天気です。めげずに、ご来会ください。

今週も「神田古本まつり」が開催中です。世界一の古本街にふさわしい、たっぷりとした量の本が並ぶイベントです。最近では、新刊書店の方がバーゲンブックのイベントも行うので、そちらも(そちらは?)大人気とのこと。人が多いので私は近づきませんけれど。
でも、今は本が安くてお客さんにとってはとても良い時代ですよね。時間は有限ですけれど、本を愛する人達が少しでも長く活動を続けられることを祈ります。

中央市会だより(10月19日版)

中央市会だより(10月19日版)
大変、胸が騒いでいます。
本日は、朝9時の集合。いつもより、一時間早めです。置いてある荷物の量を見て、「これは、久しぶりにやばいヤツだ」と思いました。文字通り、折り重なるようにして本が山積みです。
というわけで、長々とこれを書いているわけにも行きませんので、すぐに並べに戻ります。取り急ぎお伝えしたいのは、今回は結構荷物が多いということ。目に付いた品物は、土鈴・顕微鏡・筆硯・勲章・切符・高さ一メートルはあろうかという図鑑、だということ。つまり、質の方は保障しないということ。です。
もちろん、素敵な本もたくさん出ておりますが、気が焦り過ぎて思い出せません。ぜひ、ご自身の眼でお確かめください。

出品の量がとても多く、なかなか苦労な一日でした。量が1.5倍になると、作業量が倍以上増えてしまうのはなんか面白いところです。一般的な例に置き換えてみようかと試みたのですが、思いつきませんでした。
「高さ一メートルはあろうかという図鑑」というのは、「大図録 日本の蝶」という本でサイズもデカければ、値段もなかなかでかかったです。

上の文章で、「つまり、質の方は保障しないということ。です。」という部分が評判が悪かったらしく、お客さんから指摘がありました。私の意向としては、「ぜひ、ご自身の眼でお確かめください。」につなぐブリッジとしてなんとなく書いたのですが、確かに出品していただいたお客さんにとっては、自分の品物の文句を言われたと感じられても仕方のない表現でした。「量が多すぎてなんだかわからない」くらいの感じにしておけば良かったですね。

「街の古本屋入門」(志多三郎 KG情報出版)を読んだ

「街の古本屋入門」(志多三郎 KG情報出版)
「古本屋の書いた古本屋の本」に対しては、やはりどうしてもなんというか、色々と思ったり言いたくなったりすることが多く、なかなか素直に「良い」とは言えないのだけれど、この本は良かった。おぉ、驚いたかね。

この本の一番素敵な点は、この古本屋さんが体験的に知り得た「本当のこと」が書いてあって、大上段にも構えないし、自分を大きく見せようと見栄も張らずに、とつとつと「自分の仕事」について書いている。そんな書き方で、書いた本人はつらくなかったのかね、と心配になるほど。

まぁ、そんなことだから、内容的にはさして面白いこともなく、一般の人が興味深く読める内容でも無いと私は思うのだけれど、古本屋が苦笑いをしながら頁をめくる分には本当に申し分ない内容だと思う。もし誰かがこの本を手に取って、頁をめくることがあるのならば言いたい。「これが古本屋ですよ」と。

全部で267頁、ことごとく普段私が言っているようなことが書いてあるので、内容的には全くその通りで問題のないものでしょう(冗談ですよ?)。というわけで、「古本本」ではなくいわゆる「古本屋本」はこれが最終決定版なので、他の本は読む必要はありません。いやぁ、良かったね。こういう本があって。

初出は1986年の光文社文庫で、私が読んだのは1997年発行の復刻版となります。30年前の本なので、インターネットの抬頭はまだなく、ブックオフの影もまだ見えない頃でしょうか。ということは、80年代の後半から現代に至って、今まさに「滅びゆく古本屋」の姿がこの本ということになりますね。

もうこの頃から、「売れない売れない」と書いてあって、「俺の仕事はもう30年も売れてないのか」と思うわけだけれど、それと同時に古本屋という仕事とその営みは、さして変わっていないのだなとも思えました。何かこの人も俺も、文句ばっかり言ってるよな、みたいなことも含めて。

いや、もちろん大きく変わっているに決まっているのだけれど。ただ、底の方に流れているものがあり、そこは変わっていない気がします。
「ハイ。私もそのことを知っています」と、大先輩の背中にそっと呟いた気になった読書でした。

中央市会だより(10月5日版)

・10月5日版
「カウンセラーの本」を読んで、その気になっていました。
まぁ、私は病理学的なことにはあまり興味がないので、「カウンセリングをするお医者さん」の方のことを書いた本です。「病気を治す方の人」が、どのような歴史をたどって、何を考えながら今にいたったか。書いている作家さんの腕もあって、なかなか楽しく読み終えました。
うつ病100万人」という時代だそうです。「100万人のよる」とは訳が違います。学校に行きたくない、会社に行きたくない、確かに最近良く目にする話です。その点、私は「事務所に行きたくない、本なんか見たくない」とは思いません。まだ仕事したい。なんなら次はお茶が一杯欲しい。
「こんなに健康で良いもんかね。恥ずかしいね、現代人としてさ」 隣りに積んである縛った本口に話しかけました。返事がない。よかったよかった。

ダンボール箱から出てきた、戦前・戦中の無線雑誌が、とても状態が良くて思わず声をあげました。素晴らしい。古いものがキレイに残っていると、それだけれ嬉しくなります。
目玉になりそうなのは、写真集「ゲリバラ5 股旅阿万恋歌『あたしはリルの娘』」。奥付の既刊リストに、「センチメンタルな旅」が掲載されていたりするのを見ると、その時代/時期/風景が立ち上がってくるような気になってきます。気になるだけなんだけどね。

中央市会だより(9月21日版)

・9月21日版
朝、お茶の水駅からの坂を下りていると、目の前で二匹の雀が仲睦まじくお互いを突きあっていました。祭日ですし、人通りも少ないのでここを使ってもいいだろう、という感じでしょうか。
それを見て、なんだか自由でいいなぁと思いました。こちとら、これから仕分で並べで仕事で、それに朝食も食べていないのでお腹も空いているときています。おまけに仲睦まじくする相手もいないし。とは思ったものの二羽の邪魔をするのは我慢しました。まぁ、彼らには保険はおろか、病院もないし。冬になればまんまるにならなければならないし。それはそれで大変そうですし。実は二匹で、血で血を洗う突きあいをしている可能性もありますし。
というわけで、連休中なのですが本日も中央市会は開催しております。うかつにも、お出かけなさっている本屋さん。みなさんのために、今日はネット入札も開催しております。エクストラネットより、ご参加いただけます。
来週は「一新会の大市」のため、中央市会はお休みとなりますのでお気をつけて。よその会の宣伝など、しませんけれど。

市場は、「祭日だけれどやる場合」もあれば「祭日だからやらない場合」があります。なるべく、月に3回以上やるように調整しています。ただ、やはりお休みの日は品物もお客さんも少し寂しめですね。