言葉がうつる

最近は、読書はしても「小説」はあまり読んでいなかった。

日本で「本」といえばまず「小説」のことを指し示すから、まずそのことが気に食わない、とまではいかないけれど、「なら私は小説じゃなくていいです」という感じ。

そんな折、ちょっと人から話を聞いて、「あぁそれは面白いに決まってますね。読んでみます」と思った本があったので久しぶりに小説を読んだ。これが実際に大変おもしろく読めて良かったのだが、それは右に置いておいて、小説を読んでいるとそれに「言葉がうつる」のに驚いた。

例えば、こうやって書いている文章が、今読んでいる本の文章に引っ張られている感じがある。(いや見ても分からないだろうが、書いている本人の実感としてある) 人と話していると、相手の口ぐせや動作を「おもわずやってしまう」のに近い。

「話す」ということの中には、言葉のチョイスの仕方は当然として、音程やリズムや歯切れといったものが、全部「その人」として現れているのだけれど、文章にもそういうところがあるんだろうなと思う。そしてそこにある文章が触媒となって、自分の中のことが勝手に出てくるのも面白かった。